ウォーデン『グリーフカウンセリングとグリーフセラピー』|悲嘆の課題

死別からしばらく立った頃、誰かにこんなことを言われるかもしれません。
「前を向いて生きていこう」
「そろそろ元気にならないとね」
「次、がんばればいいんだよ」
いえ、もしかしたら、自分でそう考えることがあるのかもしれません。
今の生き方から変化を促されることは、自分の歩幅を超えて無理に手を引かれているような無理を感じることでしょう。
でも、この気持ちの、その先に進むって、どういうことなんでしょう。
もしかしたら、その人を忘れることなのでしょうか。
もう、大丈夫と自分に言い聞かせて日常をこなすことなのでしょうか。
大切な人との別れには、
受けとめきれない現実があり、
変わってしまった生活があり、
もう同じ形では会えない、その人との関係があります。
その中で、どうしていけばいいのか。
これから、何を抱えて生きていくのか。

ウォーデンは、悲しみの中で向き合っていく4つの課題を考えました。
1つめは、なくしたことを受け入れること
その人が亡くなったという現実に触れ、少しずつ受け入れていく課題です。
頭では理解できても、心や身体が追いつかないことがあります。
そのことが、死別を受け入れられていない訳ではありません。
無理に自分を納得させようとすることでも、あきらめてしまうことでもありません。
亡くなったという事実が、自分の生活や感じることの中に、しみじみと入ることに近いです。
2つめに、死別の痛みにふれること
大切な人をなくしたときの
悲しみ、怒り、悔い、不安、寂しさなどの痛みにふれていく課題です。
痛みは心だけではなく、感じることがあります。
例えば、身体や考えが変わったり、ひとりで過ごす方を選びがちだったり、何度も同じことを考えてしまったり。
でも、ひどい痛みに無理に触らないことも大切です。
「悲しめば課題達成」ではなく、
十分に悲しむこと、自分自身を守ること、どちらも大事なんだと考えると良いかもしれません。
3つめは、新しい環境に適応していくこと
これからを組み立て直していくという現実的な課題です。
その人がこれまでしてくれていた役割が抜け落ちてしまうこともあるでしょう。
例えば、家事だったり、お金のことや、子育てや介護、人間関係。
そのときになって、はじめて、してくれていたことに気づくこともあるでしょう。
自分自身の内面の環境も変化します。
これから何者としていきていくのか?
どう生きていけばいいのか?
あの人がいた世界と、いなくなってしまった世界。
死別で変わってしまった現実の中で、
その差に何度もぶつかりながら、生きていくために少しずつ仕組みを作り直していきます。
最後に、亡くなった人との関係を保ちながら生きていくこと
亡くなった人の立ち位置を心の中におきながら、自分の人生を歩む課題です。
「忘れる」ことがゴールではありません。
「もう悲しまない」ことがゴールでもありません。
心の中で話しかけたり、
その人から受け取ったものを、自分の中に感じ続ける。
目に見えない絆でふたりの関係が続いていきます。
その繋がりを持ったまま、生きる形を見つけていくことなのかもしれません。
4つの課題は、ウォーデンからの宿題ではありません。
他の誰かのチェックが入ったり、採点されたりするものではありません。
少ししんどさを感じたときに、今の自分が、どんなことに向き合っているのかな?と、参考にしてみるくらいでよいのかもしれません。
悲しみを終わらせるためのマニュアルはありません。
ウォーデンの4つの課題は、失った人を心の中で抱きしめながら、しっかりと生きていくための地図のように読みとることができます。
役立つ情報はこれ
死別後のつらさは、悲しみだけではないかもしれません。
死別の現実に何度もぶつかること。
その人がいない生活に慣れなければならないこと。
なくした人を自分のなかでどう抱えていけばいいのかということ。
気づかなくても、ウォーデンの4つの課題に日々向き合っているから苦しいのかもしれません。
何事もなかったかのように振る舞うわけではなく、
向き合える時期も、その向き合い方も、自分がそうしたい、と感じるやりかたで大丈夫です。
ウォーデンの4つの課題は、自分が今どこで苦しくなっているのかを見つける手がかりになるものだと思います。
そう考えると、少し自分に優しくなれそうな気持ちがもてるのではないでしょうか。
